もうすぐ暑い季節を迎えます。
冷たくて清らかな水は美味しいですね!
熱中症の予防にも、水分補給をと口やかましく叫ばれます。
しかし、健康に良いはずの水も、飲み方を間違えると恐ろしいことになるのです。
今回は、水の飲みすぎによって引き起こされる【水中毒】についてお話します。
水中毒とは
水中毒って何かな?
水を飲みすぎることで、体の電解質バランスを崩してしまう症状のことよ
水中毒とは、真水を飲みすぎることで、体内の電解質バランスが壊れる症状のことです。
特に血中のナトリウムが薄まってしまい、低ナトリウム血症を引き起こします。
血中のナトリウムが少なくなると、脳が敏感に変化を感じ取ります。
そして脳機能障害が初めに起こります。
軽いうちは頭痛、そしてだんだんとけいれんやひきつれ、さらにひどくなると反応が鈍くなり、昏睡状態に陥ります。
低ナトリウム血症は初期にはほとんど無症状です。最初に影響を受けるのは、血液中のナトリウム濃度の低下を特に敏感に感じ取る脳です。そのため、血液中のナトリウム濃度が120~130mEq/Lぐらいになると「軽い疲労感」を感じ始め、そのうちに「反応が鈍くなる」、「錯乱する」といった脳の症状に加え、頭痛や嘔吐、食欲不振などが出現します。110 mEq/L程度まで低下した重症例では筋肉のひきつり、けいれんの発作が起き、さらに昏睡に陥り、ついには死亡してしまうこともあります。特に心臓や肝臓、腎臓に持病のある人に、これらの症状があるときは早めに医師に伝えてください。
ドクターズファイル
死んじゃうこともあるのか!
そうよ!重症になると大変なの!
水中毒の原因は?
水中毒の直接の原因は、真水を大量に飲みすぎることにあるのですが、何故、大量に水を飲むのかという背景については、2種類あります。
一つはただ、不注意や危険性を知らずに水を大量に飲んでしまうことですが、もうひとつ、心因性のものがあります。
それが【心因性多飲症】です。
精神的なものもあるんだね!
ひとつずつ見ていきましょう
不注意や危険性を知らずに水を飲みすぎる
”過ぎたるは及ばざるがごとし”という言葉がありますが、水が中毒を起こすことがあるなんて、知らない人が多いのです。
水って、世の中で一番、安全な飲み物だと思いませんか?
間違いではありません。
糖分のたっぷり入ったジュースや、酒などのアルコールに比べれば、ずっと体によいはずです。
熱中症では”水分補給を!”と叫ばれます。
ダイエットや美容のために、水を多く飲むという美しい女性を見ていると、水を飲めば飲むほど体に良いような気さえしますね。
しかし、”過ぎたるは及ばざるがごとし”なのです。
1日に飲む水の適量は2リットルまで。
3リットルを超えてくると、水中毒の症状を起こすことがあります。
ちなみに致死量は6リットルと言われます。
水を大量に飲むと、血中のナトリウムが薄まることで、低ナトリウム血症を引き起こすのです。
重症化すれば死んでしまうというのは、先ほどもお話した通りです。
ぜひ、際限なく水を飲むことが体にいいわけではないと、知っておいてください。
心因性多飲症
ストレスや不安、精神的な病気などが原因で、本人の意思では水を飲むことをやめられない症状です。
依存症に近いかもしれませんね。
統合失調症の患者さんには、時々見られるそうです。
本人は水を飲むことで安心するので、それを急に禁止すると精神的に不安定になってしまいます。
カウンセリングなど、精神科で治療を受けることが大切です。
精神安定剤などのお薬で水を飲む症状が軽くなることもあります。
特殊な例:MDMAによる影響
アメリカの29歳の男性の水中毒の死亡例で、MDMAの関与を疑わせる事例があります。
彼は、友人とお酒を飲みに出かけた際にMDMAを服用し、自宅に帰ってからも様子がおかしかったそうです。
お兄さんの止めるのも耳に入らない様子で7リットルの水を飲み続け、病院に連れていかれましたが、脳浮腫により命を落としました。
彼の場合は、不注意や危険性を知らないで水をがぶ飲みしたわけでも、不安やストレスによって水を飲むことに依存してわけでもありませんでした。
MDMAによって、普段とは違った異常な行動をとった結果と言えます。
MDMAの異常行動に水をがぶ飲みすることがあるらしく、水中毒になった症例はたくさんあるとのことです。
水中毒の死亡例
水中毒で死んでしまうこともあるということはお話しましたね。
ここでは有名な例をいくつかご紹介します。
アメリカの水飲みコンテスト
2007年にアメリカのFMラジオ局KDND-FMが、ゲーム機のwiiを賞品とした水飲みコントストを開催しました。
”ウィー(おしっこ)を我慢してwiiを獲得しよう(Hold Your Wee Wor a Wii)”と銘打ったコンテストで、225ミリリットルのボトル水を15分間隔で飲みます。
その間、トイレもいけませんし、吐き戻してもダメです。
どれだけたくさんの水を飲めるかが競われました。
この大会に出場した3児の母、ジェニファー・ストレンジさん(28歳)は、合計7リットルの水を飲み、2位にランクイン。
大量の水を飲んだため、はちきれんばかりのおなかをしていたそうです。
子供たちがゲーム機を欲しがったために、このコンテストに出場したそうですが、この数時間後、頭痛がすると言って職場を早退し、自宅で死亡しているのが発見されました。
遺族はラジオ局に賠償金を請求し、15億ドルの賠償金が支払われました。
まさか水で人が死ぬなんて、衆生した本人も、ラジオ局も思いもよらなかったのでしょう。
ゲーム機を手に入れても、大好きな母親が死んでしまっては、ご家族も悲しいですね。
フットボールの練習中に死亡
2014年、17歳の高校生ザイリス・オリバー君は、フットボールの練習に精を出していました。
彼は水をよく飲む子で、練習中にけいれんを起こすこともありました。
実は、これは水中毒の症状だったのですが、そうとは知らないオリバー君は、これを脱水症状だと勘違いしました。
結局7リットルの水と、7リットルのゲータレード(スポーツドリンク)を飲み干し、意識を失いました。
病院に運ばれましたが、水中毒による脳浮腫になり、すでに脳死状態。
医師に脳死を宣言されて5日後に生命維持装置を外され、命を落としました。
けいれんって脱水症状でもなるから、水の飲みすぎかどうかわからないよ!
水をどれだけ飲んでいたかで判断するしかないわね
MDMAの関与が疑われる死亡例
2010年、29歳の空調エンジニア、マシュー・エリス氏。
彼は友達とお酒を飲みに出かけましたが、そこで覚せい剤のMDMAを飲んでしまいました。
家に帰ってからお兄さんのアンドリューさんが、弟の様子がおかしいのに気が付きました。
彼は瞳孔が開いていて、足がふらついていたのです。
時々酔っぱらって帰宅することはあっても、こんな状態は初めてでした。
やがてお兄さんの注意を振り切って、7リットルもの水を飲み干し、さすがにおかしいと思ったお兄さんに連れられて病院へ行きましたが、水中毒による脳浮腫の状態で、命を落としました。
MDMAによる異常行動で、水をがぶ飲みすることはよくあるそうで、死亡例は珍しいですが、水中毒自体はよく起こるそうです。
なんにせよ、薬物は怖いですね。
日本での死亡例
日本でも水中毒による死亡例があります。
2012年、宮崎市の精神病院に投稿失調症の女性(36歳)が入院していました。
彼女は病気から、水を飲むことを止められない症状があり、病室の洗面台から水をがぶ飲みし、水中毒により命を落としました。
遺族が病院側に対し「洗面台の水道の元栓をしめるなどの対処をしなかったことが死亡事故を招いた」として損賠賠償を求めました。
地方裁判所も高等裁判所も病院側の過失を認め、2600万円の賠償金が支払われました。
心の病から水をがぶ飲みすることもあるんだね
依存症みたいなものね
その他
実は、ブルース・リーも水中毒で亡くなったのではないかと最近言われ始めました。
クリニカル・キドニー・ジャーナル誌の発表では、ブルースリーが水の飲みすぎで水中毒を起こして死亡したのではないかと書かれています。
死因は鎮痛剤摂取による脳腫腸とされていました。
ブルースリーは喉が渇く大麻を摂取していたり、食事をリンゴジュースなどの液体で取るなど、危険因子があったようです。
鎮痛剤を酒で飲むなど、腎臓を傷める行為もあったようで、腎臓が過剰な水分を排出できなかったことで、脳主腸を起こしたのではないかということです。
薬物などで腎臓に負担がかかっていたところに、水分の取りすぎが重なったことによる事故ではないでしょうか。
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